2020年3月、死刑確定者を支える弁護士の活動に、資金提供と助言を行うことを主な事業とする財団が設立されました。「一般財団法人金子武嗣&上原邦彦死刑確定者人権基金」です。このページでは、同人権基金の援助によって提起された訴訟について、弁護団からご提供頂いた資料を中心に関連情報を掲載しています。  更新 2024.4.15

第4号事件 死刑執行情報公開請求事件

弁護士およびジャーナリストが、法務省および3つの矯正管区に対し、開示請求した6名の死刑執行にかかる文書につき不開示とされた文書について開示を求め提訴しました。死刑執行に関する情報を公開することにより、死刑執行が適正・適法になされているのか、日本の絞首刑が現段階で憲法が禁じる「残虐な刑罰」にあたらないかどうかを検証することを目的としています。

第 一 審
提訴日 2024(令和6)年1月23日
裁判所 事件番号 大阪地方裁判所(第2民事) 令和5年(行ウ)第8号、第14から23号
訴状 日本語  英語
記者レク資料 日本語
裁判の進行状況 第1回口頭弁論 2024年4月19日(金)午後1時30分

第3号事件 絞首刑執行差止等請求事件

大阪拘置所に収容されている死刑確定者3名が、絞首刑が残虐で非人道的な刑罰を禁ずる国際人権規約(自由権規約)に違反する執行手段であることを理由に、絞首刑による死刑執行の差止め、絞首による死刑執行を受ける義務がないことの確認、及び、絞首による死刑宣告を受けた精神的苦痛に対する国家賠償を求める訴訟を提起しました。

第 一 審
提訴日 2022(令和4)年11月29日
裁判所 事件番号 大阪地方裁判所(第2民事部) 令和4年(行ウ)第169号
訴状 日本語  英語
プレスリリース 日本語・英語
裁判の進行状況

2023年4月 第1回口頭弁論 国側は「死刑の執行方法を行政訴訟で争うことは実質上、死刑判決の取り消しや変更を求めることであり、許されない」として、請求を退けるよう求めた(朝日23.4.26朝刊)。

2024年3月 第4回口頭弁論 原告代理人が、死刑執行に立ち会ったことのある千葉景子・元法務大臣から聞き取った報告書を提出した。千葉氏が2010年に報道陣に刑場を公開した際に「国民が適切に刑罰を判断するには適切な情報提供が必要だ」と法務省職員を説得した経緯も明かしたという。また、原告側は、死刑執行に立ち会った元刑務官らの証人尋問や、大阪拘置所の刑場の検証も請求した(朝日24.3.19 18:30, 大阪弁護士会シンポジウム「今、死刑を考える」)。

第2号事件 死刑の執行告知と同日の死刑執行受忍義務不存在確認及び国家賠償請求事件

拘置所に収容中の死刑確定者2名が、死刑執行の日時の事前告知なく執行当日に告知され、同日執行される現在の死刑執行実務が違法であることを理由に、受忍義務不存在確認及び国家賠償請求を求める訴訟を提起しました。

原告側は、以下の4点を問題としています。
①人間の尊厳の侵害(憲法第13条違反) 「即日告知・即日執行」は、死刑確定者の自己決定権を侵害するものであり、人間の尊厳を侵している)。
②国際人権準則違反(自由権規約第6条・7条違反) 日本政府は、国連自由権規約委員会から、再三、第6条(生命権の保障)および第7条(残虐な、または人間としての品位を傷つける刑罰の禁止)に違反するとして、改善勧告を受けている。
③死刑執行の恣意性(憲法第31条違反) 告知の時期が、国会の定める法律で定められていない現状は、憲法31条の法定手続きの保障および最高裁判所の判例にも違反している。
④異議申立ての機会の剥奪(憲法第31条・32条違反) 即日告知・即日執行には法律上の根拠もない、死刑確定者の異議申立ての機会、裁判を受ける権利も奪われている。

第 一 審
提訴日 2021年(令和3年)11月4日
裁判所 事件番号 大阪地方裁判所(第2民事部) 令和3年(行ウ)第122号
訴状 日本語  英語
プレスリリース 日本語・英語
裁判の進行状況

2022年1月 第1回口頭弁論(産経22.1.13 17:15)。

2022年10月 原告側が、1955年に当時の大阪拘置所長により録音された執行2日前の告知から執行までの死刑確定者の肉声が録音された音声データを証拠提出(産経22.1.13 17:15)。

2022年12月 国側が、前日に告知した死刑確定者が自死したケースがあり、「自死事例を受けて当日告知に改めた」と説明。原告側は、そのような事例の詳細を明らかにすることや、告知の運用を変えた理由を詳しく説明することを求めた(朝日22.12.22 17:28)。

2023年3月 運用を即日告知に改めた詳しい理由について、国側は「回答の必要性を認めない」として原告側の求めに応じなかった(朝日23.3.17 17:32)。

2023年11月28日 第9回口頭弁論、結審。判決は2024年4月15日に言い渡される。原告側は、「適正な手続きによらなければ刑罰を科されないと定めた憲法31条に反する」と主張。国側は、憲法が事前告知を求める権利を保障しておらず、告知の時期を定めた法令もなく、「現行の運用は円滑な執行やリスク回避のために選択された」として請求の棄却を求めている(朝日23.11.28 14:20)。

判決 2024年(令和6年)4月15日 【判決PDF】
横田典子裁判長は「原告が告知同日に執行されることのない社会的地位を有するとは認められない」として、原告側の請求を棄却。原告側は控訴する方針(時事通信24.4.15 16:30)。

第1号事件 再審請求中の死刑執行国家賠償請求事件

再審請求中に死刑執行された死刑確定者の元再審請求弁護人であった弁護士らが、弁護権が侵害されたことを理由に、国家賠償請求訴訟を提起しました。

原告側は、①裁判を受ける権利の侵害(憲法第32条違反)、国際人権準則違反(自由権規約第6条違反)、③適正手続の違反(憲法第31条違反)を根拠として、再審請求中の死刑執行は許されず、日本の死刑執行の在り方には問題があると主張しています。

第 一 審
提訴日 2020年(令和2年)12月25日
裁判所 事件番号 大阪地方裁判所(第19民事部) 令和2年(ワ)第12340号
訴状 日本語  英語
プレスリリース 日本語・英語
裁判の進行状況

2023年2月の口頭弁論において、原告側は、再審請求中の執行は「見合わせることが相当」とした1951年の国の通達を根拠に現状の運用は違憲・違法だと主張。それに対して国側は1960年の別の通達で廃止されたと説明(朝日新聞23.2.9大阪朝刊)。

国側は、自由権規約には再審請求が含まれていない、また、規約や意見には法的拘束力がなく「応じなくても違法とはいえない」と主張。それに対し、原告側は、北村泰三(中央大名誉教授)の意見書を提出。「規約の条文は死刑判決を見直す手続き一般を例示したもので、日本の再審請求を含む」「委員会の意見に法的拘束力がなくても、最大限尊重する義務がある」と指摘している(朝日23.11.1 17:28)。

2024年5月8日 第15回口頭弁論 原告の反論。

   

   

2023年1月27日には、上記3事件について、日本外国特派員協会で記者会見が行われました。この模様はこちらからご覧いただけます。

   

また、2023年7月28日に、上記3事件について、各事件の弁護団事務局長にお話しをうかがいました。この模様はこちらからご覧いただけます。