令和元年8月2日(金)法務大臣臨時記者会見の概要

 本日,庄子幸一鈴木泰德の2名の死刑を執行しました。
 この2名の犯罪事実の概要等については,別途お配りした資料のとおりです。
 事件の概略を申し上げますと,まず,庄子幸一については,当初から,強盗強姦及び強盗殺人を遂行するとの確定的な犯意の下,共犯者との間で役割分担等を決め,周到な準備をした上で,僅か3週間余りの間に,連続して,何ら落ち度のない2名の被害者を強姦し,あるいは強姦しようとして暴行を加えた上で惨殺し,金品を奪うなどしたという強盗強姦,強盗強姦未遂,強盗殺人等の事件のほか,庄子死刑囚単独で,被害者方に侵入して強姦し,さらに,金品を強取するなどしたという住居侵入,強盗強姦等の事件です。自己の性的及び金銭的欲求を満たすために,家族にとってかけがえのない存在であった被害者らを殺害し,一瞬にして平和な家庭を崩壊させたものであり,その結果は極めて重大です。
 鈴木泰德については,遊興費等による借金が増えるなどして金銭に窮し,また,性的に欲求不満であったことから,僅か1か月余りの間に連続して,深夜又は早朝に,それぞれ一人で歩いていた3名の被害者を見つけるや,直ちに凶器を携帯するなどして追跡し,うち2名の被害者については,強姦し,あるいは強姦しようとして暴行を加えた上,自己の犯行の発覚を免れるために殺害し,そのうち1名からは金品も奪い,また,別の1名の被害者については,殺害して金品を奪ったという強盗強姦,強盗強姦未遂,強盗殺人等の事件です。これもまた,自己の性的及び金銭的欲求を満たすために,家族にとってかけがえのない存在であった被害者らを殺害し,一瞬にして平和な家庭を崩壊させたものであり,その結果は極めて重大です。
 このように,いずれも,誠に身勝手な理由から,何ら落ち度のない被害者の方々の尊い人命を奪うなどした極めて残忍な事案です。被害者の方々はもちろん,御遺族の方々にとっても,無念この上ない事件だと思います。
 当然のことながら,これらの事件につきましては,裁判において十分な審理を経た上で,最終的に死刑判決が確定したものです。我が国が法治国家である以上,確定した司法判断につきましては,その執行を妨げる事由がない限りは,厳正に執行されなければなりません。他方で,死刑が人の生命を奪う峻厳な刑罰である以上,その執行に関しては,刑の執行停止,再審事由の有無など,刑の執行を妨げる事由がないこと等について,慎重な上にも慎重な検討が必要になります。
 法務大臣として,そのような法の峻厳さと正面から向き合い,慎重な上にも慎重な検討を加えた上で,死刑の執行を命令した次第です。

死刑執行に関する質疑について

【記者】
 この2つの事件,両死刑囚を選ばれた背景などがあれば教えてください。

【大臣】
 今回の件については,先ほども申し上げたとおり,いずれも,誠に身勝手な理由から,何ら落ち度のない被害者の方々の尊い人命を奪った極めて残忍な事案です。一方,死刑というのは人の生命を奪う峻厳な刑罰であり,その執行に際して慎重な態度で臨む必要があります。
 一方で,我が国の刑事司法においては,一部の凶悪かつ重大な罪につき,法定刑として死刑が定められており,その死刑判決というのは,凶悪かつ重大な罪を犯した者に対し,裁判所が慎重な審理を尽くした上で言い渡すものです。
 我が国は法治国家であり,裁判所においてそのような慎重な審理を尽くした上でなされた死刑判決が確定している以上,その執行を妨げる事由がない限りは,確定した裁判が厳正に執行されなければならないということです。
 そして,本件についても,この再審事由があるか,刑の執行停止事由があるか,そうした刑の執行を妨げる事由がないことを十分に確認した上で,私としても,死刑執行を命じたところです。

【記者】
 その上で,今,再審事由という御言葉もいただいたのですが,この2人の死刑囚については,再審請求中であったのかどうか,これはいかがでしょうか。

【大臣】
 再審請求中であるかどうかにつきましては,個別の案件について私からはお答えを差し控えたいと思っています。と申しますのは,再審請求をしたかどうかという事実について,確定者自身が明らかにしたくないという考え方もあります。そうした中において,私の方から再審請求があったかどうかについてお答えすることは差し控えさせていただきたいと考えています。

【記者】
 今回の執行について,大臣としていつ署名されましたか。

【大臣】
 私が署名したのは,令和元年7月31日です。

【記者】
 臨時国会中ということもあり,なぜこの時期かという意味ではいかがでしょうか。

【大臣】
 個別の死刑執行の判断に係る事項についてはお答えを差し控えたいと考えていますが,一般論として申し上げれば,死刑執行に関しては,個々の事案につき,関係記録を十分に審査し,刑の執行停止,再審事由の有無等について慎重に検討し,これらの事由等がないと認めた場合に初めて死刑執行命令を発することとしていまして,今回も同様の慎重な検討を経て死刑執行命令を発したということです。

【記者】
 それぞれの死刑判決の確定時期を確認させてください。

【大臣】
 庄子幸一に対する死刑判決は,平成19年12月5日,確定したものと承知しています。
 また,鈴木泰德に対する死刑判決は,平成23年3月27日,確定したものと承知しています。

【記者】
 本日の執行をもって,死刑確定者数と,そのうちの再審請求中の者の人数をお伺いします。

【大臣】
 現在の未執行者数は,111名です。未執行者のうちの再審請求中の者は82名です。

【記者】
 未執行者数,これは収容していない人も含めて111名ということでよろしいでしょうか。袴田さんを含むということでしょうか。

【大臣】
 刑事施設収容中の死刑確定者は110名であり,これは袴田氏を含んでいない人数です。

【記者】
 先ほど,再審事由のところについては,死刑確定者自身が明らかにしたくないという考え方もあるとおっしゃいましたが,今回のこのお二人もそのようなお考えをお持ちだったかどうか,これについてお願いいたします。

【大臣】
 個別の事案について,再審請求中であったかどうか,そういったことについては,お答えを差し控えたいと思っています。元々再審請求手続というのは非公開の手続です。そうした中において,再審請求をしたこと自体,例えば被害者との関係において,知られたくないと考える確定者もいるという考え方もあり得るわけです。そうしたことから,私から明らかにするということは差し控えたいということです。

【記者】
 今回,改元や天皇の代替わり,即位の礼など,国民の祝賀ムードの中,死刑執行は控えるという一部の見方もあったのですが,その点はいかがでしょうか。

【大臣】
 先ほども申し上げたように,我が国は法治国家でありまして,慎重な審理を尽くした上でなされた死刑判決が確定している以上,その執行を妨げる事由がない限りは,厳正に執行されなければならないということです。他方で,やはりこれは人の命を奪う峻厳な刑ですので,執行を妨げる事由がないかどうかということは慎重に検討をする必要があります。今回もそういった検討を経た上で,執行を命じたというところです。

【記者】
 今回は二人とも強姦をしていたということです。強姦は魂の殺人だと大臣もおっしゃっていたところですが,厳罰化が進む中で今回執行したということで,判断過程にそういうことは含まれていたのでしょうか。

【大臣】
 御指摘のとおり,強姦あるいは強制性交等罪等の性暴力について,これは許しがたい犯行でありますし,また,本件につきましては,その後殺害するという,極めて悲惨な事案です。ただ,一つ一つの事件について執行を命ずるかどうかにつきましては,やはり先ほど申し上げたように,確定判決というものを踏まえ,一つ一つ執行を妨げる事由がないかということを,慎重な上にも慎重に検討をした上で判断に至ったものということです。

【記者】
平成から令和になって,今回,令和で初めての執行ということだと思いますが,なぜこの時期なのかということと,今後も法務省としては,おっしゃるとおり法に則って死刑を執行するという姿勢だということでよろしいでしょうか。

【大臣】
 個別の時期的なものであるとか,あるいは今後の見通しについて,私から申し上げることは差し控えたいと考えています。いずれにせよ,執行命令については,裁判所が慎重な上にも慎重な検討を重ねた判決があり,これが確定したという厳然たる事実がある中で,これについて,執行を妨げる事由があるのかどうか,それを慎重に検討した上で判断に至ったということです。

【記者】
 今回,2人ともが女性に対する強姦等の死刑囚ということですが,最近,悪質な性犯罪について無罪判決が出ていて,それに対する批判の声が上がっているのですが,それと絡んだタイミングというか,関係はあるのでしょうか。

【大臣】
 結論から申し上げると,今おっしゃった性犯罪事件に関する無罪判決というのは,個別の事件に関して個々の裁判所においてそういった判断がされたものであって,これに関して法務大臣としてコメントは差し控えさせていただきます。
 他方で,今回の死刑判決というのは,先ほど申し上げたとおり,確定判決を前提とした上で,その執行を妨げる事由がないかどうかということを,慎重の上にも慎重に検討した上で,決断に至ったものです。
(以上)