平成28年11月11日(金)法務大臣臨時記者会見の概要

本日,田尻賢一の死刑を執行しました。この者に関する犯罪事実の概略を申し上げますと,本件は平成16年に金品を強取する目的で民家に侵入し,1名の女性を殺害して金品を強取し,さらに平成23年にも,金品を強取する目的で民家に侵入し,1名の女性を殺害し,1名の男性に重傷を負わせて金品を強取するなどした強盗殺人,強盗殺人未遂等の事件です。本件は,誠に身勝手な理由から被害者の尊い人命を奪うなどした極めて残忍な事案であり,被害者や遺族の方々にとって無念この上ない事件だと思います。そして当然のことながら裁判所において,十分な審理を経た上で最終的に死刑が確定したものであります。以上のような事実を踏まえ,慎重な検討を加えた上で死刑の執行を命令しました。

死刑に関する質疑について

【記者】
今回,大臣に就任して以来,初めての死刑執行となりました。まず,死刑執行の受け止めをお伺いいたします。
【大臣】
申し上げるまでもなく,死刑は人の命を絶つ極めて重大な刑罰です。したがって,その執行に際しては,慎重な態度で臨む必要があるものと考えています。それと同時に,法治国家においては確定した裁判の執行が厳正に行われなければならないことも言うまでもないところです。特に死刑の判決は,極めて凶悪かつ重大な罪を犯した者に対して,裁判所が慎重な審理を尽くした上で言い渡すものであり,法務大臣としては,裁判所の判断を尊重しつつ法の定めるところに従って慎重かつ厳正に対処すべきものと考えています。また,先ほど申し上げましたが,本件については,誠に身勝手な理由から被害者の尊い人命を奪うなどした極めて残忍な事案であり,被害者や遺族の方々にとって無念この上ない事件だと思います。本日の死刑執行は,これらのことを踏まえつつ慎重な検討を経た上で死刑の執行命令を発したものです。
【記者】
今回で未執行の死刑確定者は何人になりますか。
【大臣】
本日現在で,法務省において把握している死刑確定者は129名です。
【記者】
裁判員裁判で行われた死刑判決に基づく二例目の執行だと思いますけれども,それについての受け止めと,日本弁護士連合会が死刑廃止を求める宣言を出したばかりで,その直後の初めての死刑執行となりますが,それについての受け止め,併せて2点お伺いします。
【大臣】
死刑の判決は,極めて凶悪かつ重大な罪を犯した者に対し,裁判所が慎重な審理を尽くした上で言い渡すものであり,裁判員裁判においても,同様に慎重な審理や協議を尽くした上で,死刑の判決を言い渡すものであると承知しています。したがって,法務大臣としては,裁判所の判断を尊重しつつ法の定めるところに従って慎重かつ厳正に対処すべきものと考えています。本日の死刑執行もこうした観点に立って,慎重な検討を経た上で死刑執行命令を発したものです。
日本弁護士連合会が,10月7日に福井で開かれた大会において,死刑の廃止を目指すとの,死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言を採択したことは,私も承知しています。死刑制度の存廃については,様々な御意見があるものと承知しています。今回の宣言についても,そのような御意見の一つであると認識しています。もっとも,これまでも申し上げていますが,国民世論の多数が,極めて悪質,凶悪な犯罪については,死刑もやむを得ないと考えており,多数の者に対する殺人や,強盗殺人といった凶悪犯罪がいまだ後を絶たない状況に鑑みれば,その罪責が著しく重大な凶悪犯罪を犯した者に対しては,死刑を科することもやむを得ないものであって,死刑を廃止することは適当ではないと考えています。
【記者】
前回の裁判員裁判での執行の後に,裁判員経験者の方々が死刑についての情報公開などを求める要望を法務省に出されています。今回の裁判員裁判による二例目の執行という観点ではいかがでしょうか。
【大臣】
現在,氏名,生年月日,犯罪事実,執行場所以外の事項を公表することについては,刑の執行を受けた者やその家族に不利益や精神的苦痛を与えかねないことや,他の死刑確定者の心情の安定を損なう結果を招きかねないこと,そういった問題が大きいと考えられることから,公表を差し控えるべきだと考えています。
【記者】
数字を確認させていただきます。129人ということですが,袴田巌さんは含まれているのでしょうか。また,第二次安倍政権になってから,何人目の執行となるのでしょうか。
【大臣】
本日現在で,法務省において把握している死刑確定者は129名であり,袴田巌氏も含まれています。
第二次・第三次安倍政権においては,合計として10回目,17人目の執行となります。第三次安倍政権においては,合計で6人目の執行となります。
【記者】
129人の中に田尻死刑囚は含まれていないということですか。
【大臣】
129人には含まれていません。
【記者】
今回の執行に当たって,慎重な検討を重ねたということを繰り返し協調されていますが,どれくらいの時間を掛けて検討されたのでしょうか。
【大臣】
御質問が検討の具体的な中身に関わることになります。個々の死刑執行の判断に関わる事項については,お答えを差し控えたいと思います。
【記者】
今後の執行について,どのように臨まれるかについてお伺いします。
【大臣】
死刑は人の生命を絶つ極めて重大な刑罰です。今後の死刑執行の判断に関わることについて,大臣である私から発言すること自体で,死刑確定者の心情の安定を害するおそれもあると考えます。したがって,今後の死刑執行に関わる所見については,お答えは差し控えたいと思います。
(以上)