平成30年8月3日(金)法務大臣閣議後記者会見の概要

 先月,死刑を執行した麻原彰晃こと松本智津夫ら13名に関するものを始めとした一連のオウム真理教関連事件について,それらの刑事裁判記録や死刑執行に関する行政文書を総体として将来に受け継ぐために,刑事裁判記録の法定の保管期間が満了した後も「刑事参考記録」として期限を定めず保存するとともに,死刑執行に関する行政文書も,同様に期限を定めず保存するよう指示しました。
 このような指示をするに至った理由について御説明します。
 死刑執行の際にも申し上げたところですが,松本を始めとしたオウム真理教による一連の事件は,長期間にわたって,組織的・計画的に殺人等の多数の犯罪が繰り返されたばかりでなく,教団が武装化を進める中で,化学兵器であるサリンやVX,小銃等の製造に及び,サリンやVXを用いた殺人等や,さらには一般市民を対象とした無差別テロにまで及んだものであって,極めて凶悪・重大なものであり,数多くの尊い命が奪われ,多くの方々が傷害を負わされ,我が国のみならず,諸外国の人々をも極度の恐怖に陥れたものでした。
 過去に例を見ない事件であったとともに,今後二度と起きてはならない事件であるといえます。
 このように前例を見ない重大な事件であることからすれば,一連のオウム真理教関連事件の刑事裁判記録や死刑執行に関する行政文書は,犯罪に関する調査研究の重要な参考資料となり得るものであると考えています。
そこで,これらの刑事裁判記録等が廃棄されてしまうことを避け,確実に保存して,将来の世代に受け継いでいくことも,私の重要な責務であると考え,今回の指示を行ったものです。

オウム真理教関連事件刑事裁判記録等の刑事参考記録指定に関する質疑について

【記者】
 先ほど大臣からオウムの事件に関して,刑事参考記録にするというお話がありましたが,刑事参考記録が何かというのは非公開だったと思います。今回,これまでの取扱いと異なっていて公開されるとのことですが,その意義についてお願いします。

【大臣】
 冒頭御報告しましたが,今回の一連のオウム真理教関連事件は,前例を見ない重大な事件であり,その刑事裁判記録等は,今後二度とこのような事件が起きないようにするための調査研究の重要な参考資料ともなり得ることから,その刑事裁判記録等を将来の世代に確実に受け継いでいくことが重要であると考えています。
 その場合,一連のオウム真理教関連事件の全体像を理解することができる記録を受け継ぐためには,オウム真理教関係者が行った様々な犯罪に係る刑事裁判記録等を総体として保存していく必要があると考えています。
 しかしながら,これらのオウム真理教関連事件の中には,法定刑としては軽いものもあることなどから,一般的な刑事裁判記録の保管・保存のルールに従うと,廃棄される刑事裁判記録が出てくる可能性があります。
 また,死刑執行に関する行政文書についても,保存期間が定められており,保存期間満了後には廃棄される可能性があるということです。
 そこで,これらの刑事裁判記録等を確実に保存して,将来の世代に受け継いでいくために,今回,指示したものです。
 現在,法務省に設置した公文書管理・電子決裁推進に関するプロジェクトチームが動いており,今回の刑事参考記録を含む刑事裁判記録の保存の在り方等の様々な事柄について検討しているところですので,その中でただ今御質問の件についても検討してまいりたいと考えています。

【記者】
 大臣の指示により「刑事参考記録」として指定されることになる事件は,何件・何名分あるのでしょうか。

【大臣】
 オウム真理教関連事件の刑事裁判記録ですが,現時点において,法務省が把握しているもので,約190名分です。事件件数については,会見後に事務方から説明させます。

【記者】
 調査研究目的ということであれば,国立公文書館に移管する方が良いのではないかという意見もあると思いますが,これについての御意見をお聞かせください。

【大臣】
 刑事裁判記録については,刑事裁判記録の訴訟終結後の適正な管理を図るために規定された刑事確定訴訟記録法等の関連法令に基づいて適切な保管,閲覧を継続するということが重要であると考えています。
 一連のオウム真理教関連事件については,先ほど説明したとおり,歴史に残る重大な事件であると考えており,その刑事裁判記録や死刑執行に関する行政文書については,いずれは,国立公文書館へ移管されることを期待したいと考えています。
 現在,法務省に設置した公文書管理・電子決裁推進に関するプロジェクトチームにおいて,刑事参考記録を含む刑事裁判記録の保管の在り方等につきいて検討している状況です。その中でも検討していきたいと考えています。

【記者】
 報道目的や学術研究目的による刑事裁判記録の閲覧については,閲覧がほとんど認められていないのではないかという指摘もありますが,今回の指示によって,一連のオウムの事件については,報道目的や学術研究目的と認められる場合は,保管担当検察官が閲覧を制限せず,広く認められるという理解でよろしいでしょうか。

【大臣】
 今回の一連のオウム真理教関連事件については,調査研究の重要な参考資料ともなり得るものであり,刑事裁判記録等が保存期間満了後廃棄されてしまうことを避け,確実に保存して,将来の世代に受け継いでいくため,指示を行ったものですが,今後も,これらの閲覧請求については,刑事確定訴訟記録法等の関係法令に基づき,検察官において,適切に対応するものと承知しています。

【記者】
 今後,他の重大事件についても,あらかじめこのような形で「刑事参考記録」として指定することもあり得るという理解でよろしいでしょうか。

【大臣】
 今回は,一連のオウム真理教関連事件の重要性等に鑑み,保存を継続することとしたものですが,他の事件についても,記録の適切な保存という観点から適切に対応してまいりたいと考えています。

【記者】
 一連のオウムの関連についてなのですが,どうして起きたのか,そして同じような事件が起こらないようにするためにどのようにすべきかを明らかにすべきだという声が高まっていると思います。法務省には法務総合研究所という機関がありますが,法務総合研究所においても調査研究をすべきではないかと思うのですが。

【大臣】
 法務総合研究所は,犯罪に関する様々な調査研究を行っている研究所です。今回保存を指示した刑事裁判記録等についても,そのような調査研究において活用されることとなるものと考えています。

【記者】
 「刑事参考記録」と指定されている事件のリストは明らかにされていないと思うのですが,今後それを明らかにする考えはありますか。

【大臣】
 現在,法務省に設置した公文書管理・電子決裁推進に関するプロジェクトチームにおいて,刑事参考記録を含む刑事裁判記録の保管の在り方等について検討しているところです。その中で検討していくこととしたいと思っています。
 一般的なところで申しますと,どのような事件が刑事参考記録として保存されているかということについて,これを明らかにすることについては,被告人その他の関係人の名誉,プライバシー保護の観点を十分考慮する必要があります。その意味では,大変慎重な検討が必要であると認識しています。

【記者】
 大臣はかつて初代公文書管理担当大臣をお務めになりましたが,その経験者として,適正な公文書管理の在り方の観点から,改めて今回の指示に対する問題意識を改めてお聞かせください。

【大臣】
 私は初代公文書管理担当大臣を拝命し,公文書管理法の法律制定においても様々な角度から議論をし,そして,この法律の制定につなぐための努力をしてきた者の一人です。私自身の経験と問題意識を踏まえ,今回の一連のオウム真理教関連事件については,過去に例を見ない事件であったとともに,今後二度と起きてはならない事件であり,その刑事裁判記録等は今後の調査研究の重要な参考資料となり得るものであって,これが保存期間満了後廃棄されてしまうことを避けるために,確実に保存して,将来に受け継いでいくということも,私の重要な責務であると考え,今回の指示を行ったものです。そのようなことから今回の指示についてはしっかりと取り組んでまいりたいと思いますし,また,PTの議論についてもしっかりと取り組んでまいりたいと思います。