平成29年8月3日(木)上川法務大臣初登庁後記者会見の概要

死刑に関する質疑応答について

【記者】
死刑制度について伺います。7月13日に死刑が執行された2人のうち1人は再審請求中であったとされていますが,大臣は再審請求中の死刑執行について,どのようにお考えでしょうか。また,死刑執行の対象者の選択理由といった死刑の実情などの情報公開についてのお考えもお聞かせください。
【大臣】
7月13日に死刑が執行された者による再審請求の有無等については,お答えは差し控えさせていただきたいと思います。一般論としてですが,再審請求の手続中は全て執行命令を発しない取扱いとするというのは,死刑確定者が再審請求を繰り返す事態が起き得るので,永久に刑の執行をすることができないことになり,刑事裁判の実現をしっかりとしていくことが不可能となりかねません。したがって,死刑確定者が再審請求中であったとしても,当然棄却されることが予想せざるを得ないような場合については,死刑の執行を命ずることもやむを得ないと考えています。
死刑執行に関する情報開示という面ですが,刑罰権の作用については,本来死刑の執行に限られ,それを超えて国家機関が死刑の執行に関する情報を殊更に公表するということについては,死刑の執行を受けた者や関係者に対し,不利益や精神的な苦痛を与えかねないこと,また,他の死刑確定者の心情の安定を損なう結果を招きかねないことなどの問題があります。他方で,死刑の執行が適正に行われていることについて国民の理解を得るためには,可能な範囲で情報を公開する必要があります。また,被害者を始めとする国民からの情報公開の要請も高まっている昨今の状況を踏まえ,死刑を執行した日に執行を受けた者の氏名,生年月日,犯罪事実及び執行場所を現に公表しているところです。しかし,その範囲を超える事項については,公表を差し控えるのが相当ではないかと考えています。死刑執行の情報公開については,これまでの大臣がいろいろな場面の中で少しずつ問題提起をして実現したところであり,執行を受けた者の氏名,生年月日,犯罪事実及び執行場所の公表が適切ではないかと考えています。
【記者】
国際的にみると死刑制度がある日本に対して,批判の声も一部にはあるのですが,大臣の在任期間中,死刑制度そのものの在り方について検討するお考えはありますか。
【大臣】
海外や国際機関からの御指摘について,様々な問題提起がなされていることは存じ上げています。先程冒頭申し上げたとおり,日本は法治国家です。死刑は厳罰であり,命を奪うことにつながるわけですから,今ある制度の中でどのように対応していくのかを慎重にしていきたいと思っています。
【記者】
制度そのものの在り方について,議論を進めるというお考えは特にありませんか。
【記者】
今の段階で直ちに進めますということを申し上げるには,初めての法務大臣の時にも厳しく突きつけられた問題でもありますので,絶えず考えてまいりたいと思っていますが,今,この場所で明確にお答えする段階ではありません。