令和2年9月17日(木)上川法務大臣初登庁後記者会見の概要

死刑制度に関する質疑について

【記者】
 続いて2点目ですが,死刑制度について,大臣のお考えをお聞かせください。

【大臣】
 死刑制度につきましては,我が国の刑事司法制度の根幹に関わる重要な問題であると考えております。
 国民の皆様,世論におきましても,こうした制度についての考え方については,様々な考え方があるということでございまして,こうした世論に十分に配慮しながら,社会における正義の実現等,種々の観点から慎重に検討すべき問題であると考えております。
 国民世論の多数の皆様が極めて悪質,また,凶悪な犯罪につきましては死刑もやむを得ないと考えておりまして,多数の者に対しての殺人や強盗殺人等の凶悪犯罪がいまだ後を絶たない状況等に鑑みますと,その罪責が著しく重大な凶悪犯罪を犯した者に対しましては,死刑を科することもやむを得ないのであり,死刑を廃止することにつきましては,現在のところ,適切ではないのではないかと考えております。

記録の保存と開示に関する質疑について

【記者】
 それからもう1点,記録の保存と開示のことについてお伺いしたいと思います。前回法務大臣をされていたときに,オウムの全記録の保存というのを決めてくださいました。そして,刑事参考記録のリスト化についても道筋をつけていただきました。そして,菅首相が官房長官のときに,オウム事件のいろいろな資料についてのアーカイブ化の指示を,厚生労働省と,それから法務省に出されています。厚生労働省の方は会議などを作ってやっているようですけれども,法務省の方が,この間伺った中では全然遅々として進んでいないような印象を受けました。
 40分以上くらい掛けてようやく分かったのは,刑事参考記録になっているのは,少なくとも1件みたいな感じで,そうすると,この刑事参考記録のリスト化の時から全然進んでいないのかなという感じもするのですが,こういった問題,保存と開示の問題,これは御専門だと思うのですけれども,今後どういうふうに取り組んでいくおつもりか,伺わせてください。

【大臣】
 まず,官房長官のお言葉についての言及がございましたが,アーカイブ化を進めるということで,厚生労働省と法務省に対しまして,それをしっかりとやるようにと指示を出したので,やっているのではないかという御発言だったというふうに伺っております。もとより,公文書はしっかりと残すべきであるということについては,これはもう基本的な考え方でありますので,特に重大事件に係る文書につきましては,総体として残していくということ,この可能性は徹底的に追求していくべきことではないかと私自身は考えております。
 今御指摘がありました刑事参考記録,あるいはリスト化の問題,なかなか遅々として進んでいないのではないかという御指摘でございますが,今どういう状況なのかにつきまして,改めてよく精査をしてまいりたいと思っております。
 その上で,その状況の判断と評価と,そしてこれから先の見通しということについても,またいずれしっかりと御報告させていただきたいと思います。

死刑執行に関する質疑について

【記者】
 上川大臣がこれまで法務大臣在任中に執行を命じた死刑は,計16名となっています。その中には,一連のオウム真理教事件で残されていた6名が含まれています。オウム真理教が国家転覆する,すなわちクーデターを起こそうとしていたということは早川ノートなどから明らかですが,その企ての重要参考人である幹部たちを全員死刑にしてしまったことで,最終的なオウム真理教の企ての全容が究明されないまま,事件に蓋をされてしまったと言えます。
 これは,国民の安全な生活に対する重大な損失であると考えますが,大臣の考えをお聞かせください。

【大臣】
 大変重要な御指摘をいただきました。先般の死刑執行に関しましてということでございますが,今,御指摘のありましたように,様々な御意見があるということにつきましては,十分承知をしているところでございます。
 その上で,一般論として申し上げるところでありますが,死刑というのは,人の命を絶つ極めて重大な刑罰でございますので,その執行に際しましては,慎重な上にも慎重な態度で臨む必要があるものと考えております。
 同時に,法治国家でありますので,確定した裁判の執行が厳正に行われなければならないということも,これも言うまでもないところでございます。
 特に,死刑の判決につきましては,極めて凶悪かつ重大な罪を犯した者に対しまして,裁判所が慎重な審理を尽くした上で言い渡すものであるということでございまして,法務大臣といたしましては,裁判所のこの判断を尊重しつつ,法の定めるところに従って慎重かつ厳正に対処すべきものであると考えているところであります。
 御指摘のありました先般の死刑執行につきましても,このような観点から,慎重の上にも慎重を重ねて検討した上で,死刑執行命令を発したものでございます。

再審制度に関する質疑について

【記者】
 再審制度について伺いたいと思います。いわゆる袴田事件に関して,今,第二次再審請求の特別抗告審が続いているところでありますけれども,袴田さんが高齢であることから,早期の再審決定開始を求めております。
 お答えしづらい質問と分かっておりますけれども,大臣の所感がもしあれば,お答えいただきたいと思います。また,袴田事件を含む再審をめぐっては,再審の法整備の充実を求める声もあります。法整備について,お考えがあれば教えてください。

【大臣】
 ただいま全般に御質問をいただきました事案につきまして,現在,特別抗告審に係属中でございますので,個別事件ということで,法務大臣としての所感につきましては,述べることを差し控えさせていただきたいと思っております。
 その上で,2点目の御質問,再審の制度についての考え方いかんということでございます。先ほど申し上げたとおり,個別の案件につきましての観点からということについては差し控えるわけでございますが,一般論ということでありますが,当然のことでありますが,犯人でない者を処罰をするということについては,これは絶対にあってはならないと思っております。
 その上で,再審制度についてでありますが,確定判決の存在を前提として,主として事実認定の不当を是正し,有罪の言渡しを受けた者を救済するための非常の救済手段と位置付けられていることであります。
 様々な御意見があるということにつきましては,承知をしているところでございます。
 ただ,現時点におきまして,この現行法の規定に直ちに手当をする必要があるかどうかというようなことになりますと,特段の不備があるとは認識しているところではございません。
 いずれにしても,再審制度の在り方そのものにつきましては,確定判決による法的安定性の要請と,個々の事件における是正の必要性との調和点をどこに求めるかということに関わるものであると認識しておりまして,様々な角度から慎重に検討すべきものと考えております。