死刑制度・死刑執行の在り方に関する質疑について
【記者】
法務大臣の重大な職務の一つである死刑の執行について伺います。今年6月には、2年11か月ぶりとなる死刑が執行されました。死刑制度の在り方について、存廃も含め大臣の考えを伺います。また、執行に対する大臣自身の考えについても併せて教えてください。
【大臣】
死刑制度の存廃というのは、我が国の刑事司法制度の根幹に関わる重要な問題であると認識しており、国民世論に十分に配慮しつつ、社会における正義の実現といった種々の観点から慎重に検討すべき問題であると認識しています。
国民世論の多数が、極めて悪質、凶悪な犯罪については死刑もやむを得ないと考えているところであり、多数の者に対する殺人や強盗殺人等の凶悪犯罪がいまだ後を絶たない状況に鑑みると、その罪責が著しく重大な凶悪犯罪を犯した者に対しては、死刑を科することもやむを得ないと考えています。
したがって、死刑を廃止するということについては適当でないと考えています。
申し上げるまでもなく、死刑は、人の生命を絶つ極めて重大な刑罰ですから、その執行に際しては、慎重な態度で臨む必要があるものと考えています。それと同時に、法治国家においては、確定した裁判の執行が厳正に行われなければならないことも言うまでもないところです。
特に、死刑の判決は、極めて凶悪かつ重大な罪を犯した者に対して、裁判所が慎重な審議を尽くした上で言い渡すものですから、法務大臣としては、裁判所の判断を尊重しつつ、法の定めるところに従って慎重かつ厳正に対処するべきものであると考えています。
【記者】
続けて死刑制度に関連してお伺いします。いわゆる袴田事件では、一度死刑判決を受けた袴田巌さんが再審を経て無罪となりました。過去の事件判決が誤っていると判断された形です。現在の死刑囚の中には再審請求中の人もいますが、再審請求中の人に対する死刑執行の在り方についてどのようにお考えでしょうか。
【大臣】
個別事件における判決について、法務大臣としての所感を述べることは差し控えたいと考えていますが、その上で、一般論として申し上げれば、再審請求中であるということは、刑事訴訟法上、死刑の執行停止事由とはされていないわけです。
そして、死刑の執行に関しては、個々の事案について、関係記録を十分に精査し、刑の執行停止、再審事由の有無等について、慎重に検討をして、その是非を判断すべきものと考えています。
再審制度に関する質疑について
【記者】
刑事裁判をやり直す再審制度について伺います。近年は、静岡県一家殺人事件における袴田巌さん、それに福井女子中学生殺人事件における前川彰司さんの例のように、重要事件で最終無罪の確定が相次ぎました。制度の課題について、大臣はどのように見ておられますでしょうか。
また、再審制度をめぐっては、法制審議会で見直しの議論が進んでおります。同時に、超党派議連が作成した制度改正案を野党6党が提出済みです。立法府の中には、重要部分については議連案を審議して速やかに法改正し、より細かな部分について法制審で議論すべきではないかといった意見もあります。この点、あるべき議論の進め方や、法務省として努力したい点について、大臣のお考えを教えてください。
【大臣】
再審制度については、近時、一部の再審請求事件について審議の長期化が指摘されるなど、法改正に関するものも含め、様々な議論がなされていることは承知しています。
その上で、再審制度の在り方については、確定判決による法的安定性の要請と個々の事件における是正の必要性の双方を考慮しつつ、様々な角度から慎重かつ丁寧に検討する必要があると考えています。
議員立法に関わる事項について、法務大臣として所感を述べることは差し控えますが、再審制度の改正は、基本法である刑事訴訟法の改正に関わるものであり、刑事裁判実務に非常に大きな影響を及ぼし得るものです。
したがって、現在、法制審議会刑事法部会において御議論いただいているところです。
法務省としては、法制審議会において十分な検討が行われ、できる限り早期に答申をいただけるように尽力してまいりたいと考えています。

